「平地の五つの町(cities of the plain)」
のうちの四つです(もう一つはベラ=ツォアル)。

1. まず全体像:五つの町とは?
創世記に出てくる構図はこうです。
- ソドム(Sodom)
- ゴモラ(Gomorrah)
- アデマ/アドマ(Admah)
- ツェボイム/ゼボイム(Zeboiim / Zeboim)
- ベラ(Bela)=ツォアル(Zoar)
これらは死海周辺、ヨルダン低地の「シディムの谷(Vale of Siddim)」にあったとされ、
後にソドムとゴモラと共に、火と硫黄によって滅ぼされた「悪名高い一帯」として、聖書全体の中で象徴的に扱われます。ウィキペディア+1
申命記29:23では、イスラエルが神との契約を破った場合、
「ソドム、ゴモラ、アデマ、ツェボイムが覆されたように…」
と、四つまとめて「徹底的な裁きの象徴」として引き合いに出されています。

2. アデマ(アドマ)とは?
2-1. 聖書の中での登場箇所
アデマ(ヘブライ語:אַדְמָה Admah)は、聖書では主に以下で顔を出します。ウィキペディア
- 創世記10:19「カナン人の領域」の境界の一部として
- 創世記14:2「シディムの谷の戦い」に参加した諸王の一つの町として
- 申命記29:23 (今あなたが問題にしている箇所)
- ホセア書11:8 「エフライムよ、どうしてあなたを見捨てられよう。
イスラエルよ、どうしてあなたを引き渡せよう。
どうしてあなたをアデマのように、
どうしてあなたをツェボイムのようにできようか。」
ホセア11:8は重要です。
ここでは、神がイスラエルに向かって、
「お前をアデマやツェボイムのように“徹底破壊”してしまうこともできるが、
わたしはそうしたくない。」
と、「完全に滅ぼされた町」の代表例としてアデマとツェボイムを引き合いに出しています。
2-2. どんな町だったのか?(推測の範囲)
聖書は、アデマの具体的な罪の中身については多くを語りません。
しかし、
- 常にソドム・ゴモラとセットで出てくる
- ホセアで「徹底破壊の象徴」として扱われる
ことから、
・文化的・道徳的にも、ソドム圏の堕落に同調していた町
・神の長い忍耐を踏みにじり、最終的な裁きに至った共同体
として理解されます。
位置に関しては、
死海南部周辺にあったとする説が有力ですが、
発掘地点の特定は決定的ではなく、複数説があります。ウィキペディア+1
(考古学的には「この遺跡がアデマだ」と断言できる段階にはありません。)
3. ツェボイム(ゼボイム)とは?
3-1. 聖書の中での登場
ツェボイム(Heb. צְבֹיִים Zeboim / Zeboiim)は、アデマとほぼセットで出てきます。バイブルハブ+1
主な登場箇所:
- 創世記14:2
「ソドム、ゴモラ、アデマ、ツェボイム、ベラ(すなわちツォアル)の王たち…」 - 申命記29:23
- ホセア11:8(アデマと対になっている)
ここでも、ソドム・ゴモラと並び、
「徹底的に覆された、神の裁きの町」
として扱われます。
3-2. 性格と象徴
ツェボイムもまた、
ソドムと同じ「平地の町」の一つであり、
エリア全体としての罪(暴虐、不正、偶像、性的退廃、弱者への圧政など)に加担していたと考えられます。
重要なのは、
聖書の中で、
ツェボイム単独で「祝福」や「回復」の象徴として扱われることはない
という点です。
常に、
- ソドム・ゴモラ・アデマの「仲間」として
- 「こうなってはならない最悪の結末」として
引き合いに出されます。
4. ソドム・ゴモラとの関係性
4-1. 「四つ+ツォアル」というパターン
聖書全体では、
ソドムとゴモラが話の中心に置かれますが、
背景には常に「一帯としての五都市」があります。ウィキペディア+1
- ソドム:中心都市、もっとも象徴的
- ゴモラ:ソドムと並ぶ悪名の象徴
- アデマ・ツェボイム:ソドム圏の「同類として滅ぼされた町」
- ベラ(ツォアル):ロトが逃げ込むために一時的に残された小都市
つまり、ソドムを「東京」のように見れば、
アデマ・ツェボイムは「同じ圏内の都市」くらいのイメージです。
4-2. 「一つの町の罪」ではなく、「文化圏全体の罪」
ここが神学的に非常に重要です。
神の裁きは、
一都市ソドムだけに向けられたものではなく、
“平地一帯の文化圏そのもの”に下ったと見てよい。
- 不義と暴虐が「システム」として蔓延していた
- 弱者の叫びがその一帯から天に届いていた
- もはや局所的な改善ではなく、「リセット」レベルの裁きが必要な状態
申命記やホセアが
「ソドム・ゴモラ・アデマ・ツェボイム」とまとめて持ち出すのは、
「堕落が都市一つを超え、
神が一帯を“反面教師のモニュメント”として残された」
という重みを持たせるためでもあります。
5. 申命記29章の文脈:なぜここで四つの町の名が出てくるのか

申命記29章は、
モーセがヨルダンを前にして語る「契約更新」の場面です。
そこでは、
もしイスラエルが偶像に走り、契約を破るなら、
その結末はどうなるかが警告されています。
「その地全体が、硫黄と塩で焼けただれ、
種はまかれず、何も芽を出さず、
草木一本生えないようになる。
ソドム、ゴモラ、アデマ、ツェボイムが主の怒りと憤りをもって覆されたように。」
ここでモーセは、
あえてソドムだけでなく、
アデマとツェボイムも含めて「四つの町」を並べる。
これは、こういうメッセージです。

「神の裁きは“話に聞く伝説”ではない。
地上の具体的な町の歴史の中で、
実際に起こったことだ。
そしてそれは“一都市だけ”の話ではなく、
一帯の文化圏が裁かれた例なのだ。」
イスラエルが契約を踏みにじれば、
「選民だから例外」ではなく、
同じように“平地の町々”と同列の裁き対象になり得る――
それを突きつけるための引用です。

6. 霊的な教訓としてどう読むか
テンプルナイトとして、
この四都市の名前をどう読むか、最後に整理します。
- ソドム・ゴモラ
- 「罪の象徴」「裁きの象徴」としてもっとも有名
- 高慢・暴虐・不義・性的退廃・弱者への冷酷・神への反逆の凝縮
- アデマ・ツェボイム
- 「ソドム文化圏に同調していた町」
- 主犯格ではないかもしれないが、
同じ波長を生きたがゆえに、一緒に裁きを受けた町 - 「直接の当事者でなくても、システムに乗り、流れに同調した結果、同じ裁きに参与する」という警告の象徴

ホセア11:8で、神が
「どうしてあなたをアデマのように、ツェボイムのようにできようか」
と言われるのは、
「わたしは、お前たちを“完全消し去り”の町として扱いたくない」
という、燃えるような憐れみの表現です。